誰もいない東京の姿を写した「TOKYO NOBODY」が気になって東京都写真美術館へ。
写真家:中野正貴氏の初の大規模展だという今回の展示「東京」。
全作品撮影OKというのが嬉しい。
その時の思いを置いておけるのは有難い。日本のアートシーンでもこういうスタンスがもっと増えると良いなと。
気に留まった写真と会場の様子を幾つか。
1/26までの会期で行ったのは1/24。終了間近でしかも15時頃だったけど平日だったからか空いていてとても見やすい環境。
「東京」は幾つかのカテゴリーに分けて東京の風景を展示してあって、最初は今回訪問のきっかけになった
「TOKYO NOBODY 東京無人」
Shibuya Station East Exit,Aug.1992
1992年の渋谷駅東口。人気のない寂れた情景がほんの数年前の地元の駅のようで、都会と田舎には25年もの遅れの差があるんだなぁと、流石中心部だなぁと、そんなことを考えてみたり。
なんだろう、なんだか懐かしく感じられるのって、何故なんだろう。アーチ状のデザイン?
”新しい世紀の東京はどうなるのだろうと考えた時、都市の部分的な各論ではなく大都市そのものと対峙した写真が必要だと感じた。”
中野氏が無人の東京を撮り始めたのは1990年初頭。バブル崩壊という社会背景と20世紀末というタイミグに依るとのこと。
”やがてこの写真の本当の主役はそこに写っていない人々であることに気がついた。”
そっか、「東京」って言ったら最先端の建物とか技術とかアートとかがあってこそ、あるからこそという漠然とした感覚があったけど、そっか。そうじゃなくて、結局は「人」なんだ。
考えてみれば当たり前の事なんだけど、それを考えて来なかったんだな。私。
”破壊と再生という回転を始めてしまった都市はそれを続けるしか存続の道がない。”
”それならばとことん近未来都市を目指すべきなのかもしれないが、どこかに違和感を覚える。”
自国の歴史や風土、伝統を見失い西欧の価値観に影響され過ぎてしまった、それが現在の東京であると。
”10年前と今を合わせても違和感がないのが東京”
今から10年後の東京の姿は果たして。
「TOKYO FLOAT 東京水景」
かつては水の都であった江戸の、今は?
”川面にゆらゆらと映る虚像の東京に愛おしさを感じた。”
生き物が出てきたことでなんだかほっと安心した気持ちに。
居て当然と思っているものが無いことに無意識に違和感を抱いていた?
”予想以上に東京は小さい”
「TOKYO TOWER 東京主塔」
スカイツリーが出来ても、それでも東京のシンボルとしては東京タワーが上だと思う。その1つには赤色だっていうのが大きな要素な気がする。
コカ・コーラの自販機があることで途端にオモチャのような世界観に感じられる。かわいい。
マンションの隙間からドヤる東京タワー。
今から六本木を破壊し始めそうな。
「TOKYO WINDOWS 東京窓景」
目まぐるしい速さでトレンドが変化する東京と言う外空間と、自分の趣味嗜好を堅守しようとする内空間の、二つの異なる世界。
この、社会と個人の関係が交錯する接点が、窓。
朝起きで窓開けてこんなんひょっこりされたら和むわ~
特別用事はないけど浅草に行きたくなる。
窓から見える景色を撮るのではなくて、窓も存在させることによって2つの世界を1つの画面に視覚化することが可能になると。
因みに今回のフライヤーに使用されている写真も東京窓景から。
”省略された窓の内側”
「TOKYO ELEMENTS 東京切片」
切片:切れ端
1つが成しているのではなく、複数によって形作られているのが都市。その各々の特徴が連動し相乗効果を生んだ時に都市が魅力を放ち始める。
”一歩足を踏み入れた瞬間に、こんな物がこんな場所にあるのかという不意打ちと、ささやかな失笑を与えてくれるようなテイストが望ましい。”
キレイであることが必ずしも魅力的だとは限らない、ということでしょうか。キレイと感じるということはその逆があってこそ、だしな。
ささやかな、失笑。
とても好ましい。
「TOKYO SNAPS & CONFUSION 東京刹瞬」
無意識の行動、ボディランゲージからその人の感情をある程度憶測出来る。
うん。それは解る。
”逆に言えばその場の全体的な雰囲気を感じられる。”
先の東京切片と同様に、人もまた、要素を持った個々が集まることで1つの場を形作っているということか。
何でもないと感じる日常は、瞬間的なミニドラマの連続から成っている。
なんか向こうで外人さんが一緒に写真撮ってるな~って思ってたら、なんとご本人だった!?
えぇ、ヘタレておりますので遠目にこっそり盗撮する程度でございます…
こういう時に身構えてしまうのは、性格もあるだろうけど、自分の中に考えがないからなんだろうなと痛感する。ちょっとずつでもいいから本質を考えて感じられる人間になっていきたい。
”写真家は主観的にその状況に突入し客観的に世間を観ることを同時に要求される”
…こりゃ難しいぞ。
主体的では、ダメなんだ。
”わかりづらいが故にミステリアスな魅力があるとも言い換えられる。”
”わからないから知りたくなる。”
”東京への執着、それは愛情。”
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中野正貴写真展「東京」
2019年11月23日(土)-2020年1月26日(日)
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